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バレエボーイズ [外国映画]

 先日、北欧映画祭が、大阪梅田阪急百貨店本店で開かれました。これを主催したのが、「キノ・イグルー」という移動映画館。2003年に有坂塁氏と渡辺順也氏が設立されました。東京を拠点に全国のカフェ、パン屋、酒蔵、美術館、無人島などで、世界各国の映画を上映しているそうです。


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          トルゲール、       シーヴェルト、       ルーカス


 「バレエボーイズ」は、ドキュメンタリー映画で、ノルウェーのオスロでプロのバレエダンサーを目指す3人の少年を追った成長物語だ。男子にはめずらしいバレエの世界で、ひたむきにレッスンに打ち込む。


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 彼らにとっては、楽屋でふざけ合いながら3人で女の子の話や、色々なことを語り合うだけが、唯一の息抜きだった。そして、厳しい練習に耐え、お互い切磋琢磨していた。


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  3人の根城、「オペラハウス」(オペラとバレエのための建物)


 16歳になったとき、3人は進学するか、バレエをやめて他の職に就くか、迷う。学校の先生と親を交えての面談もあった。


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 ある日ルーカス1人だけが名門ロンドン・ロイヤル・バレエスクールから招待受験の報をもらった。彼らは人生の分かれ道の選択を余儀なくされる。そのまま、ノルウェーに残れば、進学後の授業料は免除され、しかも他の職業への移行も認められている。

 3人とも、中産階級の至って普通の家の子供だった。ルーカスは「自分にはバレエしかない」と心に決めていたが、英国のロイヤル・バレエ団への入門の道には、多額の資金が必要だった。
 ルーカスは両親と真剣に話し合う。両親はルーカスの気持ちを知っていて「お金のことは心配するな」という。そして、ルーカスの本当に進みたい道へ行くように説得する。これがルーカスの運命を決めることになった。やはり、両親の理解と後押しは、人生において大変重要なもので、心温まる光景だった。

 けれども、他の2人にとって、ルーカスのロイヤルバレエスクール入門は、やはり複雑な心境のようだった。十代とはいえ、人生の戦いは始まっているのだなと思った。だからといって、関係が悪くなることはなかったようだが。
 トルゲールは素直にルーカスの英国行きを喜んで、祝福する。しかし「バレエを続けていると、40歳ぐらいになったら、身体がボロボロになってしまうかもしれない」 と思う。
シーヴェルトは、ルーカスが、英国バレエスクールへの入門が決まったというメールに返事をしなかった。でものちに、会ったときには祝福する。

 
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      卒業式

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      卒業公演


 他の2人はノルウェーでの進学を決める。そして、卒業式と卒業公演があり、ルーカスは仲の良い2人と離れて、ひとり英国のバレエ学校に入学する。そこではまた、厳しい練習の日々が待っていた。


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 ロンドンのバレエ学校での訓練の日々。 

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 まだノルウェーにいて、紅顔の美少年だったころ

 上の写真を比べると、ノルウェーにいたころと、ルーカスの顔が全く変わってきているのがよくわかります。大人っぽい顔に変化しています。


 この作品は、若さのもつきらめきとひたむきさ、夢や友情、葛藤と挫折そして挑戦が、バレエの躍動感あふれる映像の中にはさみ込まれた、すばらしい青春ドキュメンタリー映画でした。

 ちなみに、3人のその後ですが、ルーカスは英国ロイヤル・バレエ団で活躍中で、今は公式プロフィールがあります。シーヴェルト(中国系の子)は、アメリカのテキサスへ渡り、バレエを続けています。そして、トルゲールはノルウェーの軍隊に入隊したそうです。

 これからも彼らが、それぞれの場所で、いい人生を送ることを願ってやみません。

原題:Ballet Boys  監督:ケネス・エルヴェバック   
出演:ルーカス・ビヨルンボー・フレツロド、 シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、
   トルゲール・ルンド
2014年 ノルウェー





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フェルメール展(大阪天王寺美術館) [アート・カルチャー]

 今月の12日が、大阪のフェルメール展の最終日でした。朝の用を済ませ、お昼前に、長蛇の列に並ぶのを覚悟で、「大阪天王寺美術館」へ急ぎました。この美術館は「あべのハルカス」の近くにあります。少し並びましたが、すぐに入館できました。

 フェルメールは、静謐な作風と、特徴的な光の表現で知られ、世界中を魅了する17世紀オランダの画家です。本展では、そのフェルメールの作品を、同時代のオランダ絵画とともに紹介していました。まずは、同時代のオランダ絵画を紹介します。


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 「手紙を読む女」  ハブリエル・メツー 1664- 年頃 
  これは、手紙を読む女性と、その召使が描かれていて、背景の海の荒れ模様が、手紙の内容を知らしめているとのこと。


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 「人の居る裏庭」  ビーテル・デ・ホーホ  1663-1665年頃


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 「本を読む老女」  ヘラウト・ダウ     1631-1632年頃
この老女の顔や服装、装飾品が大変精密に描かれている。高価な様の衣装やアクセサリーから、老女がお金持ちであることが、想像できる。
 

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 「家族の情景」   ヤン・ステーン     1665-1675年頃


 展示されていた同時代のオランダ絵画は、ネット上にも画像がなくて、ホームページ上もこの4点しか、表示されていませんでした。色々いい絵がありました。


 そして細い通路を抜けると、フェルメールの部屋です。照明を少し落とした部屋に、作品が浮かび上がっていました。今までの部屋とは違って、絵が光を放っているように感じました。
 他のオランダ絵画は、フェルメールの絵のように、それ自体が光を放っていると感じることはありませんでした。やはりフェルメールは特別だと思います。この記事の絵の写真では、はっきりわからないかもしれませんが、人物を浮かび上がらせるような手法は、フェルメールが確立させたのだろうと思います。



 ところで、現存するフェルメール作品は35点ともいわれていますが、本展では日本初公開となる「取り持ち女」など6点が集結。西日本では過去最大規模のフェルメール展でした。では年代順に観ていきましょう。


 フェルメール作品の中で、最も大きく、最初期作のひとつ。画中ではキリストが、家事を心配するマルタをよそに、座ってキリストの教えを聞こうとするマリアを讃えている。光と影の戯れ、人物の特徴づけ、幅広で厚く絵の具をのせた筆さばき。ユトレヒト派の画家からインスピレーションを受けたと考えられる。フェルメールにはめずらしい大きなサイズや主題から、特別な依頼を受けて制作されたものと推測される。

「マルタとマリアの家のキリスト」158.5×141.5 1654 - 1655年頃 
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 次の「取り持ち女」(日本初公開)は、宗教画から風俗画への転換期に当たる重要な作品で、画面の左端に描かれた男性はフェルメールの自画像であるという説が有力だそうです。
 初期作の1つである本作は、フェルメールがはじめて描いた風俗画。女性は今まさにお客から金貨を受け取るところです。彼女を明るく照らす光、表情や手の動きなど、後にフェルメールが確立する表現の萌芽がすでに見られます。

「取り持ち女」143×130 1656年
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 薄暗い室内に一人腰掛ける女性はリュートを抱え、弦をかき鳴らす。左手でペグをつまみ、音階を整えている。遠く窓の方に視線を向ける様子は、窓越しに何かを見つめているのか、それとも耳を澄まし、音を追うことに注力しているのか。机の上には楽譜らしきものが重なるように置かれ、壁には、ときに絵の中で、愛する人が遠い彼方にいることを示唆する地図が描き込まれている。

「リュートを調弦する女」51.4×45.7    1662 - 1663年頃
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 17世紀のオランダでは郵便制度の発達に伴い手紙でのやり取りが盛んに行われました。毛皮付きの黄色い上着姿の女性は、机に向かい羽ペンを走らせている真っ最中である。ふと筆を休めた彼女は、絵の前に立つ我々を見つめるかのようにこちらに顔を向けます。穏やかな光の中で優しく微笑む女性。耳元の真珠のイヤリングに光の粒が輝く。当時、人々が憧れ、親しんだ手紙をめぐる情景を、フェルメールは美しい女性像を通じて描き出しています。 私ココは、この絵の印刷版を買いました。これに合う額を見つけなくては。

「手紙を書く女」45×39.9 1665年頃
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 「恋文」は大阪展のみの公開。後期作のひとつである本作は、部屋の手前からまるで中を覗き込むように描かれている。 明るい室内でシターンを膝に乗せ、手紙を受け取る女主人。 訳ありげな表情を浮かべる女主人に、お手伝いの女性はいたずらっぽく微笑み、どこか親しげな雰囲気がただよう。 練り込まれた構図と物語性の高さが際立つ本作は、1971年、盗難の憂き目に遭うが13日後に発見され美術館に戻されたそうです。よくぞ戻ってきてくれましたね。そうでないと、今回観られなかったのですから。

「恋文」44×38.5 1669 - 1670年頃
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 幻想のような現実を描き出すことにおいて、フェルメール作品は、他に類を見ない芸術的なレベルに到達した。描かれる人物はしばしば寡黙で動きが少なく、絵画に厳粛でミステリアスな雰囲気をもたらしている。この絵画はフェルメール後期の最も独創的な作品のひとつ。召使いの女性が窓の外を眺めている間に女主人が手紙を書いている。床には、この時代のやりとりで使われたであろう赤い封印、スティック状のシーリングワックス(封蝋)などが落ちている。

「手紙を書く婦人と召使い」71/1×60.5 1670 - 1671年頃
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 世界屈指の人気を誇る画家フェルメールですが、熱狂ぶりが始まったのは、実は近年になってのこと。フェルメールは作品点数が少ないことから、美術ファンの間でもルーベンスやレンブラントほどには知られていませんでした。世界的なブームは、1995-96年に米国ワシントンとオランダのデン・ハーグで開かれたフェルメール展に端を発します。この展覧会でフェルメール人気が一気に広まったそうです。

 やはり最終日に行けてよかったです。でなければ、次はいつまとまったものが観られるのか、わかりませんから。ラッキーで幸せな1日でした。

 (なお、絵画の解説は、美術館のホームページによります。)






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マイ・ブックショップ [外国映画]

 イギリスの文学賞ブッカー賞を受賞したペネロピ・フィッツジェラルドの小説をイザベル・コイシェ監督が映画化。ぜひ訪れてみたいような本屋が出てきます。もちろん架空の本屋なのですが、これはセットとして現地に建てて、内側の細かい所まで原作に忠実に創ったそうです。


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 1959年イギリスのある海岸地方の町。フローレンス(エミリー・モーティマー)は、戦争で夫をなくしたのち、二人の夢だった書店を開こうとしていた。この町には、1軒も本屋がなかったからだ。 彼女は放置されているオンボロの「オールドハウス」を買い取ったが、住民からは冷たくされる。


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 フローレンスは、ブックショップを開業する人ということで、地元の有力者夫妻のパーティーに招かれる。ガマート夫人(パトリシア・クラークソン)は、最初は本屋ができると嬉しいといっておきながら、そのオールドハウスを「芸術センターとして使いたい」と申し出る。しかし、彼女は本屋を開くゆるぎない意志を、夫人に伝えるのだった。


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 ついに、フローレンスは「オールドハウス書店」をオープンする。そこへブランディッシュ氏という老紳士から、彼女が推薦する本を送ってほしいと注文がくるのだった。ブランディッシュ氏は、古い邸宅に40年以上引きこもって本をひたすら読んでいる人だった。彼女は彼にレイ・ブラッドベリの「華氏451度」を送る。


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 ブランディッシュ氏こと、ビル・ナイ/写真の本は、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」


 本を通じてフローレンスと老紳士ブランディッシュ氏との交流がはじまる。本屋は意外と繁昌するのである。


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 そして本屋を手伝ってくれるクリスティーンという少女が現れる。フローレンスは賢い彼女を気に入って、雇うことにした。


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 そんな中、彼女をよく思わないガマート夫人(パトリシア・クラークソン)が、書店の建物と土地を、そのわがままな性格から、自らのものにしようとしていた。そして、フローレンスを窮地に追いやっていくのだった。


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 それを見ていたブランディッシュ氏は、フローレンスに、ガマート夫人に掛け会いに行くと夫人の屋敷へ向かうのである。彼は過去にガマート夫人に傷つけられたことがあり、彼女を毛嫌いしていた。老紳士は「もし映画なら、最後の場面で、ガンで(ガマート夫人を)撃ち殺したいくらいだ」などというのだった。フローレンスは、ブランディッシュ氏に心を寄せるのだが、運命は皮肉な結果をもたらした……。


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 少女クリスティーンは、とても重要な役である。最後にそれがわかって、アッと思うと同時に、納得もする。そして、クリスティーンは素敵な女性になって、「オールドハウス書店」のようなブックショップを開業するのである。


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フローレンス(エミリー・モーティマー)がオールドハウス書店で開店準備をしているところ。


 何枚かのアップした写真のように、「オールドハウス書店」はとても魅力的なブックショップです。ズラリと並んだ本の装丁の見事さに驚きました。(これは書店の内部の映像で、写真にはなかったので、表示できないのが残念!)これは、映画のためにつくったのか、それともいい本を借りてきたのか?こんな素敵な本が揃っていたら、毎日でもこの本屋に通いますね。
 
 フローレンスがブランディッシュ氏にお勧めする本が、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」。私の大好きな作家レイ・ブラッドベリの本に映画の中で出合うとは!嬉しくなりました。私が最初に読んだブラッドベリの小説は「たんぽぽのお酒」です。これは彼の半自伝的小説です。他にもファンタジーやSFなど、一時期よく読みました。
 そのほか「ロリータ」byウラジミール・ナバコフも好きです。これも映画の中では、フローレンスが大量注文する本です。この作品は、中年男が少女へ傾倒した恋をする話で、ちょっと異色の小説です。今でも「ロリータ」は魅惑的な響きを持っていて、ロリータファッションとか、ロリータコンプレックスなど、多くの派生語を産んでいます。

 フローレンスを演じたエミリー・モーティマーは、人間味のある、本への情熱を持ち続ける女性をとてもよく表現していたと思います。いい女優さんだなと思いました。

 ビル・ナイは、脇役でたくさんの作品に出ていて、色々な助演男優賞を獲得している名優だそうですが、私は今まであまり注目したことがありませんでした。でもこの作品のブランディッシュ氏ことビル・ナイは、背広をスラっと着こなしている姿も魅力的です。無骨な老紳士ながら、フローレンスへの愛情をほんの一言、二言の言葉で表現し、彼女を守ろうとする男性を演じきっていて、とてもカッコよく見えました。彼の他の作品も観てみようと思っています。


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 パトリシア・クラークソン

 有力者の嫌味な女性を演じたパトリシア・クラークソンは、とてもきれいな女優さんで、ちょっと冷たい感じが、ガマート夫人役にぴったりでした。このキャラクターがいなければ、フローレンスもブランディッシュ氏も、いい人になりえなかったでしょう。大事な役柄だと思います。

 風景の映像も美しく、またそこにはさみ込まれるアーティスティックな映像が魅力的でした。
 
 大作でもないし、手放しのハピーエンドでもないのですが、衣装も、風景も、そしてキャストや出て来る本まで私の趣味にぴったりの映画でした。大好きな料理を食べお酒を味わった後の満足感に近いように思います。皆さんもぜひ、この「オールドハウス書店」を訪ねてみられてはいかがでしょうか。

原題:THE BOOK SHOP  原作:ブックショップ by ペネロピ・フィッツジェラルド 
監督:イザベル・コイシェ  出演:エミリー・モーティマー、ビル・ナイ、 
パトリシア・クラークソンetc.
2018年 スペイン/イギリス/ドイツ



ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

ブックショップ (ハーパーコリンズ・フィクション)

  • 作者: ペネロピ フィッツジェラルド
  • 出版社/メーカー: ハーパーコリンズ・ ジャパン
  • 発売日: 2019/03/01
  • メディア: 単行本



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サクラ、桜 [日記・雑感]

大阪府北摂地方の桜です。最近、スマホに変えたので、わりあいきれいに写っていると思いました。



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新年号「令和」が万葉集からとられたので、「はじめて楽しむ万葉集」上野誠著(角川文庫)を買ってみました。この本の中から、気に入った和歌を2,3紹介しながら、桜の写真もアップいたします。


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  石走る(いわばしる)
  垂水の上の(たるみのうえの)
  さわらびの
  萌え出ずる春に(もえいずる はるに)
  なりにけるかも
   (志貴の皇子 巻8の1418)
    岩の上を、ほとばしり流れ出る 滝のほとりのわらびが
    萌えだすように天に向かって伸びていく………。
    春になった!
   
  この和歌は、「万葉集」の中でも一番人気のある歌だそうです。春が来た喜びをこれだけ
  率直に、上品に、生き生きと描いた歌は他にないからなのだそうです。これはなんとなく
  知っていました。



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  冬過ぎて
  春し来たれば(はるしきたれば)
  年月は(としつきは)
  新たなれども(あらたなれども)
  人は古り行く(ひとはふりゆく)
    (作者未詳 巻10の1994)
     冬が過ぎて
     春がやってくると、
     年月は
     新しくなるけれども……。
     人は古くなっていく……。

  一定の年齢を越えると、人は「お誕生日が嬉しくない」と思う。人は、時に年をとることを
  喜び、時にそれを嘆くという気持ちが込められている和歌です。言い得て妙だと思います。



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     忘るやと
     物語して(ものがたりして)
     心遣り(こころやり)
     過ぐせど過ぎず(すぐせどすぎず)
     なほ恋にけり
       (作者未詳 巻12の2845)
        忘れることもあろうかと
        人と世間話などをして、
        気を紛らわせて
        物思いを消し去ってしまおうとしたが……
        一層恋心は募るばかりだった……。

  恋の歌も多い万葉集。恋は一過性のもの、個人的なもの、一人一人のものである。
  しかし同時に恋の気持ちというものは、多くの人が共感する気持ちでもあることが、
  この歌からわかるとのこと。



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     我が背子を(わがせこを)
     今か今かと
     出で見れば(いでみれば)
     沫雪降れり(あわゆきふれり)
     庭もほどろに
       (作者未詳 巻10の2323)
        わたしのいい人を
        今か今かと待って、
        出てみると……。
        沫雪が降っていた。
        庭にもうっすらと。

  恋人がやってくるのではないかと思って、戸口まで駆け出してみて、見た物は雪だった。
  人を待っている女というものは、自分の神経を「待つ」ということに集中させる。それで、
  待つ女の自然を見る目が、細やかになるのだそうだ。



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 万葉集と意識して本を読んだのは初めてでしたが、この本はわかりやすく解説されています。それに、選ばれた和歌もいいものばかりでした。入門書としては最適な本だと思います。もう少し、万葉集の世界を楽しんでみたいと思いました。



はじめて楽しむ万葉集 (角川ソフィア文庫)

はじめて楽しむ万葉集 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 上野 誠
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 文庫



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Queen「Under Pressure」フレディ&ボウイ版と、他アーティストのカヴァー曲の聴きくらべ、など。 [音楽]

大好きな曲、Queenの「Under Pressure」(フレディ&ボウイ版)を、何人かのアーティストのカヴァーバージョンで聴いてみました。なかなか面白かったので、独断と偏見で、こんな記事にしました。よかったら、ご一緒にどうぞ。


まずは、フー・ファイターズ+ ロジャー・テイラー(Super Saturday Night 2019)
彼らは、Queenの大ファンで、追っかけをしたいくらいだったんですって!男たちのロジャーに対するリスペクトが、いい感じです!
「Under Pressure」
https://youtu.be/ZG-P-iIrL0Y
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次は、デヴィッド・ボウイバンドのパフォーマンス。ゲイル・アン・ドロシィが上手!彼女は、ボウイのバンドのセッション・ミュージシャンで、ベーシスト兼バック・ボーカリストだそうです。
「Under Pressure」
Bowie & Gail Ann Dorsey
https://youtu.be/DWtSyorjXv4

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かなりいかついボディですが、アダム・ランバートも、わるくないですね。歌が上手いと思います。2018年のQueenとのベルリンでのコンサートの様子です。
「Under Pressure」
Queen+アダム・ランバート in Berlin 2018/6/19
https://youtu.be/R-pTBzAiqdQ

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こんなのも見つけました。
Breaking Benjamin& Disturbed's David Draiman
Draimanが相当うまいです。音程が正確。
「Under Pressure」
https://youtu.be/FKUrPO2Cihg



そして、本家本元のQueen、フレディ&ボウイ版です。やはりフレディのファルセットがすばらしい。2人の魅力も相まって。
「Under Pressure」
https://youtu.be/YoDh_gHDvkk


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皆さんは、どのアーティストのパフォーマンスがお好きですか?



ところでご存知のように、フレディは4オクターブのオペラヴォイスを持っています。
フレディがスペインのオペラ歌手モンセラート・カバリエと共演した「バルセロナ」というアルバムがあります。(1988.10.10発売。すべてフレディの作曲)このCDがすごくいいのです。

表題曲の「バルセロナ」は、1992年のバルセロナオリンピックのテーマソングとなりました。
そして開会式の時、フレディとモンセラが歌うはずだったのですが、彼が1991年に亡くなったため、代わりにモンセラとホセ・カレーラスとのデュエットで歌われたとのことです。
この映像の中のフレディは、ヒゲをそっていて若々しく、活き活きとして素敵です。では彼のすばらしい歌唱力をご堪能ください。

Freddie Mercury & Montserrat Caballé - Barcelona (Live at La Nit, 1988)
https://youtu.be/hkskujG0UYc


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                      モンセラート・カバリエ&フレディ・マーキュリー

当時、飛ぶ鳥を落とす勢いの、モンセラート・カバリエと互角の歌唱、本当にフレディはすごい!モンセラのハートもガッチリつかんでる感じ。フレディは自信にあふれてますね。あれだけの巨大ロック・コンサートをこなしてきたからこそ、なのでしょう。彼に生き返ってほしいものです。(coco、暴走中……。)

おまけとして、レアな2曲を紹介しておきます。どちらもアルバム「Sheer Heart Attack」より。

Lily Of The Vally(谷間の百合)
https://youtu.be/2LGujYR8omQ

Flick Of The Wrist(Live 1974)
https://youtu.be/XrIZQ3CLLbU



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この写真は、Queenがデビューした当時、お金がなかったので、フレディの住んでいたフラットで撮影したもの。寄せ集めのインテリアですが、なかなか面白い写真になっていると思います。


今回も、お付き合いいただきありがとうございました。ではこの辺で。





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キャプテン・マーベル [外国映画]

 このところ、実話を映画化したものばかり観ていたので、ちょっと気分を変えて、キャプテン・マーベルを観てきました。主演のブリー・ラーソンは女優としていいなと思い、サミュエル・L・ジャクソン、ベン・メンデルソーン、ジュード・ロウも出ていたので、観たくなりました。「アベンジャーズ」をあまり観てない割には、相当おもしろかったです!


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 キャプテン・マーベルことブリー・ラーソンは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)では初めて女性ヒーローが単独で主役となったそうですね。そして監督も、マーベル映画では初の女性監督となるアンナ・ボーデンと、ボーデンとともに「ハーフネルソン」などでコンビを組んできたライアン・フレック。初づくし。


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 キャプテン・マーベルこと、ブリー・ラーソン。美人ですね。


 舞台は、アベンジャーズ結成以前の1995年。ロサンゼルスのビデオショップに、空から落ちてきた一人の女性。彼女はクリー帝国の精鋭部隊“スターフォース”の女性ソルジャー、ヴァース(キャプテン・マーベル)だった。彼女は驚異的な力を持っていたが、身に覚えのない記憶のフラッシュバックに悩まされていた。 


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 彼女の失われた記憶には大きな秘密が隠されており、それをクリー人の宿敵で、自在に姿を変える能力を持つスクラル人が狙っていた。そして、S.H.I.E.L.D.の敏腕エージェント、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が、ヴァース(ブリー・ラーソン)に興味を持ち、彼女の失われた記憶を探っていく手助けをする。このサミュエル・L・ジャクソン、顔が若いと思ったら、CGを使っているらしい。


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 それから、ジュード・ロウは、ヨン・ロッグという善い人の顔をしていて、実は悪党役。でも、やっぱり渋くて素敵です。そのほか、ベン・メンデルソーンも(チャーチルの映画では、イギリス王を演じて、すごくよかったのに)悪党なんです。でも皆、大活躍でした。

 そして、キャプテン・マーベルたちの失われた記憶を追う旅に、いつの間にか付いてきていたキュートな仲間、猫のグースが登場!この子がめっぽう可愛いんですよ。それにアッと言わせる場面がありますよ! 


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                      一番右下の、少ししか映っていない猫がグース

 とにかく、エンドロールの最後の最後まで、観てくださいね。びっくりですよ!「アベンジャーズ・エンドゲーム」も観に行きます!


原題:CAPTAIN MARVEL 監督:アンナ・ボーデン、 ライアン・フレック  
出演:ブリー・ラーソン、 サミュエル・L・ジャクソン、 ジュード・ロウ
ベン・メンデルソーン、 クラーク・グレッグetc.
2019年 アメリカ



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グリーンブック [外国映画]

 この映画の舞台は、1960年代のアメリカ南部で人種差別が当然のように行われていた時代だ。作品は、実在の天才的黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーと彼に雇われ一緒に旅をする用心棒トニー・リップ・バレロンガの話である。生い立ちも性格も全く違う二人が、最初は互いに嫌悪感をもちながらも、色々な事件に遭遇して、心を通わせ合うロード・ムービーだ。


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 黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)は、教養もあり、身だしなみもよい。そして、ピアノ演奏の腕は国内でも誰もが認めるものだった。


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 これは、カーネギーホールの上に住むドクター・シャーリーが、面接で、用心棒のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)を雇うシーンで、民族衣装を着て出て来るのだ。実際のドクター・シャーリーも、このような衣装を身につけていた写真があるそうだ。マハーシャラ・アリは、この衣装がすごく似合っている。


 ところで「グリーンブック」とは50年代から60年代、人種差別の激しかった南部を旅する黒人のために作られた、施設利用ガイドのことである。イタリア移民でマフィア御用達のクラブ用心棒だったトニー(リップ)・バレロンガは、イヤイヤながら新しい仕事に就くことになる。雇い主の黒人ピアニストのドクター・ドン・シャーリーと、南部演奏ツアーに運転手兼ボディガートとして同行するとき、グリーンブックが必要なのだった。


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 トニーこと、ヴィゴ・モーテンセンとドクター・シャーリーこと、マハーシャラ・アリ
 

 トニーは、ガラが悪くて教養もないが、口が達者なのでトニー・リップと称されていた。それに、その人柄から、皆に頼りにされていた。だが、働いていたクラブが改装のため閉まってしまうため、彼はどこかに職を見つけなければならなかったのだ。


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 リンダ・カーデリーニ(ドロレス・バレロンガ)とヴィゴ・モーテンセン(トニー)

 美人の奥さんを家に残して、トニーの旅が始まった。


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 行く先々で、ドクター・シャーリーは大変な人気で、いつもコンサートは超満員だった。けれども、彼らは常に黒人差別に出くわした。例えば、楽屋は物置のような部屋だったり、紳士服の店でいいスーツを見つけたトニーは、ドクターに試着するようにいうと、店主がとんできてとめたりと、嫌な思いをしたのである。


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 南部での最後のコンサートは、クリスマスイブだった。その日、コンサートの前に、会場に隣接の高級レストランで食事するために、ドクターとトニーが入っていくと、レストランのマネジャーがどうしても、ここでは黒人は食事できないので、黒人専用のレストランへ行けというのだった。
 
 ドクターはこういうことには、もう耐えられないといって、二人はコンサートをキャンセルして、帰路についた。途中、ドクターが「俺は何者なんだ!」と泣くシーンがあって、とても印象的に、ドクターの心の孤独を表現していたと思う。

 その旅の後、ドクターとトニーの友情は終生続き、この作品は、トニー・バレロンガの息子のニック・バレロンガが共同脚本を書いている。この人は映画人だそうだ。ニックはドクターに関するたくさんの資料や写真、二人が南部を旅したときの資料も父から譲り受け、それにドクターへのインタビューメモも一緒に、ピーター・ファレリー監督に提供した。

 ピーター・ファレリー は、『メリーに首ったけ』や『ジム・キャリーはMr.ダマー』などのコメディーを手掛けてきた。私も「メリー・・・」は観たことがある。彼は「本作は他の自作の映画とは違ったトーンになるということはわかっていて、軽すぎるようなものにはしたくなかった。全てのコメディーはドラマの中から自然に生じるようにしなくてはいけなかった。ヴィゴとマハーシャラの演技がおかしさを生んでいるんだよ」と言っている。

 先日たまたまEテレをみたときに、ファレリー監督が出ていて「今は分断の時代だから、正反対の二人の間に友情が生まれるなら、希望もある」と物語に込めた思いを明かしていた。

 そして、先日の第91回アカデミー賞では、全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞、助演男優賞を受賞した。マハーシャラ・アリは「ムーンライト」に続いて、2度目の受賞だそうだ。


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 満面の笑みですね!本当に素敵ないい俳優だと思います。これからもマハーシャラの出演作は逃さず見ていこうと思います。

 そして、ヴィゴ・モーテンセンは、「イースタン・プロミス」のカッコよさが記憶に焼き付いていますが、今作では、20㎏も体重を増やして臨んだとのこと。その努力に頭が下がります。俳優という職業はすごいですね。

 この映画、本当におもしろいし結構奥が深いです。それをシリアスに描かずに、ときにはクスッと笑えるようにえがいているところが、監督の才能だと思います。

 ドクター・シャーリーのユニークなピアノ演奏がすばらしいので、サウンドトラックを買おうかなと思っているところです。映画の中の演奏は、クリス・ボワーズという現代の才能あふれるピアニストが演奏しているとのこと。ぜひご覧になってください。


Blue Skies (ドクター・ドン・シャーリー・トリオ)
https://youtu.be/vDFnYOOovp8


原題:GREEN BOOK 監督::ピーター・ファレリー 出演:ヴィゴ・モーテンセン、
マハーシャラ・アリ、 リンダ・カーデリーニ、 ディミテル・D・マリノフetc.
2018年 アメリカ




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私は、マリア・カラス [外国映画]

 20世紀最高のソプラノと称されたオペラ歌手マリア・カラスの人生をひも解いていくドキュメンタリーです。なんてきれいな人なんだろうと思いました。それに、彼女はニューヨーカーだったんですね。ギリシャ系移民のアメリカ人です。


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 この映画は、マリア・カラス本人の映像と歌や、彼女の友人達と愛する人に宛てたプライベートな手紙などで彼女の人生を浮き彫りにしたものだ。そして、映画「永遠のマリア・カラス」でカラスを演じたファニー・アルダンが、自叙伝で語られる言葉や、手紙の朗読をする。


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 監督の トム・ヴォルフが、世界中を探し求めたというプライベート映像や、未完の自叙伝の原稿。そして400通を超えるという手紙の数々とラブレター、それらの朗読と音楽だけで成り立っている。マリア・カラス本人がすばらしい美女であるのも魅力的だが、その人生は、まるで小説のように波乱万丈だ。


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 私がびっくりしたのは、ニューヨークの凱旋コンサートに、若い男性が徹夜で並んでいるシーンだった。ロックのコンサートではなく、オペラのコンサートにこんなにたくさんの若者が列を作っているのは、見たことがない。彼らは一様に「マリア・カラスに会うためなら、まったく苦にならない」と言っていた。


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大統領やセレブも駆け付けたローマ歌劇場の舞台を第1幕で降りたことへの、激しいバッシングや、マリアに“クビ”を宣告したメトロポリタン歌劇場の支配人とのバトルがあった。それは、彼女が自分の歌唱が、完璧と思えないから、舞台を降りたことによると思う。マリア・カラスのプロフェッショナルとしてのプライドがそうさせたのだ。


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 ギリシャの大富豪オナシスとの大恋愛と夫(28歳年上の男性で1児をもうけた)との離婚、愛し合っていたはずのオナシスが、暗殺されたアメリカ大統領ケネディの未亡人ジャクリーンと結婚したことを新聞で知るという衝撃の顛末─の真相と、マリアの心の内を知ることができる。


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 それにしても、オナシスとはなんと冷酷な男なのだろう。マリアとは正式に結婚もしていなかったが、きちんと別れてもいなかった。どんなにマリアが傷ついたかは、想像に難くない。その不遇の時を支えたのは、まさにオペラを歌うことに他ならなかった。


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 けれども、オナシスは結局ジャクリーンとは後々離婚する。そして、マリアの家へ押しかけてきたそうだ。マリアはそのしつこさに負けて、また付き合いだしたが、それは恋人としてではなく、友達としての関係だったと本人が言っていた。私だったら、許せないかもしれない。マリアは度量の大きい人なのだろう。歌声にも、人を包み込むような温かさがあると思う。ちなみに、オナシスとは友達としては、上手くいったそうだ。


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 この映画の中では、マリア・カラスの歌声がふんだんに聴ける。私はオペラにあかるくないので、数曲しか知っている曲がなかったが、その歌声のすばらしさに魅了された。


蝶々夫人
なんて美しい空!
プッチーニ
シチリアの晩鐘
ありがとう、愛する友よ
ヴェルディ
ノルマ
清らかな女神よ
ベッリーニ
椿姫
さようなら、過ぎ去った日々よ
ヴェルディ
マクベス
早く来て、明かりを
ヴェルディ
カルメン
恋は野の鳥(ハバネラ)
ビゼー
カヴァレリア・ルスティカーナ
ママも知るとおり
マスカーニ
トスカ
歌に生き、恋に生き
プッチーニ
夢遊病の娘
おお花よ、お前がこんなに早く萎んでしまうとは
ベッリーニ
アンドレア・シェニエ
母が死に
ジョルダーノ
ジャンニ・スキッキ
私のお父さん
プッチーニ
他 数々の名曲が登場!


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 そして監督のトム・ヴォルフいわく、3年間かけて世界を回り、マリア・カラスの友人たちを探し出した。彼らは誰も見たことのない数多くの資料を保管していて、それらはマリア・カラスのとても個人的な記録だった。自叙伝と400通を超える手紙を読み終えた時に、やっと見えてきた〈マリア・カラスの姿〉が映画の最も重要な部分になることを確信した。今回、彼女と親しかった数え切れないほどの人々に会ったが、彼女自身の言葉ほど強く、印象的な証言はなかったので、彼女の言葉だけでつなぐことを決めた、とのこと。


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 マリア・カラスとモナコのグレース王妃 


 これまでは、マリア・カラスは気位の高い、わがままそうな人だと思っていたのです。でも、この作品を観て、彼女は美しく、温かく、心の広いすばらしい女性だという印象を持ちました。それをこの映画は余すところなく伝えています。これからは、オペラにも興味を持つことができると思います。

 残念ながら、マリアは 1977年9月16日に心臓発作でなくなり、その遺骨は生前の希望により、エーゲ海に散骨されたのだそうです。

 これは「マリア・カラス」という名のバラです。ブログ友のmayuさんが、教えてくださいました。マリアにちなんで名づけられたバラで、大輪のとてもいい香りの花だそうです。


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 では最後に、マリア・カラスの歌声をご堪能下さい。

 マリア・カラス プッチーニ作曲「私のお父さん」
 https://youtu.be/l1C8NFDdFYg


原題:MARIA BY CALLAS 監督:トム・ヴォルフ 出演:マリア・カラス(アーカイヴ映像)
朗読:ファニー・アルダン
2017年 フランス




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家へ帰ろう(うちへかえろう) [外国映画]

 ユダヤ人の仕立て屋アブラハム(ミゲル・アンヘル・ソラ)は、第二次世界大戦時にポーランドで迫害され、戦後、アルゼンチンに移り住んだ。彼は、強制収容時の後遺症で片足が不自由だった。

 88歳になった彼は、自分では望まないものの、子供たちの勧めで、高齢者用施設に入ることになったが、その入居日に、ブエノスアイレスから故郷であるポーランドを目指して旅に出る。というのも、彼には、第2次世界大戦時、ユダヤ人である自分がホロコーストから逃亡したとき、彼をかくまって救ってくれた親友に、自分が仕立てた最後のスーツを渡すという人生の約束があったからだ。


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 彼は、飛行機で隣り合わせた青年に助けられ、その次はマドリッドのホテルの女主人(アンヘラ・モリーナ)にお世話になる。この女主人が、めっぽう明るくて、魅力的な人だった。


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 それから、パリからドイツへ列車で行くとき、ドイツを通らずにポーランドへ行きたいと言い張り、駅の案内所でもめた。アブラハムは、フランス語も英語もできないので、話が通じず四苦八苦していた。


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 そんなアブラハムを見かねて声をかけてくれたのは、ドイツ人の文化人類学者の女性だった。


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 彼女はプラットホームに布切れを敷き、アブラハムを列車に乗せた。そして「ドイツ人は皆、ヒトラーやホロコーストを恥じているわ」とアブラハムに告げるのだった。
 

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 ポーランドに着いたものの、アブラハムは体調不良で倒れ、病院に運び込まれる。そして、そこで親切な看護師に介抱される。そして、親友の家のある住所まで、彼女が車を運転して、付き添ってくれる。が、アブラハムは、無事親友に巡り合うことができるのだろうか……。

 監督のパブロ・ソラルス監督は、ユダヤ系アルゼンチン人で、彼の祖父はホロコースト経験後、生涯「ポーランド」という言葉を口にすることすら拒んだ。監督は、祖父の複雑な思いを観客と共有したいという強い思いがあったのだそうだ。

 ホロコーストとヒトラーは、人類にとって忘れてはならない、負の遺産である。けれどもこの映画はその重いテーマを、アブラハムという魅力的な老人が、行く先々ですばらしい人々に巡り合い、最後の人生の目的を果たすという、感動的なロードムービーに仕上げたのだ。主役のミゲル・アンヘル・ソラは、実際は60歳だが、メイクで88歳の老人に変身している。観終わったあと、温かい満たされた気持ちで、映画館を後にできる作品である。

原題:EL ULTIMO TRAJE (THE LAST SUIT) 監督:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ、 アンヘラ・モリーナ、 オルガ‣ボラズ、
ナタリア・ベルベケ、 マルティン・ピロヤンスキー、 ユリア・ベーアホルト
2017年 スペイン/アルゼンチン





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2018年度の好きな映画5本 [外国映画]

昨年の鑑賞作品の中から、好きな映画を5本選びました。

1 ボヘミアン・ラプソディー   

  QUEENのフレディー・マーキュリーを主人公に、1970年のQUEEN結成時の様子から始まって、1985年のライヴ・エイド出演までの出来事と彼らの演奏を、ほとんどが、本物のQUEENの楽曲の音源を使用して創りあげた作品。フレディーを演じたラミ・マレックの演技がすばらしく、他のメンバーも生き写しともいうべき出来上がりである。
  フレディー・マーキュリーのロックミュージシャンとしての魅力や才能が、アメリカ人俳優ラミ・マレックによって、余すところなく表現された。加えてフレディーの、繊細で寂しがりやの性格、家族と恋人への愛、QUEENメンバーとの友情、孤独や病気との葛藤など、様々な側面が、非常にわかりやすく描かれている。QUEENの音楽を知らない人々にも感動を与え、11月公開から、未だに上映が続いてる。
  先ごろ、ゴールデングローブ賞の発表があり、ラミ・マレックが主演男優賞を獲得し、作品賞(ドラマ部門)も受賞という快挙! ラミが受賞スピーチの最後に「この賞は、フレディー・マーキュリー、あなたのものだ!」といったので、胸が熱くなりました。

 映画を観て以来、you tubeで彼らの楽曲を聴くのはもちろんのこと、フレディーはじめ、ブライアン・メイとロジャー・テイラーのインタビューも多く聴きました。その中でブライアンとロジャーがフレディーについて語っている内容を書いておきます。


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現在のブライアンとロジャー(二人ともいい顔になってますね)

ブライアン「彼が亡くなってからいつも思いだすのは、フレディーの温かさだね。彼は決して時間
      を無駄にしなかった。今でも彼の存在は、懐かしい家族を思い出すように、いつも自
      分のまわりに感じるよ。」

ロジャー 「フレディーから学んだことはたくさんあるよ。世間では、彼の派手な部分が大きく報
      道されたが、フレディーが音楽家として、すぐれた人間だったことを忘れないでほし
      い。彼はジミ・ヘンドリクスやプリンスなど、多くのロックミュージシャンが好き
      だったし、バレエやオペラについても、精通していたんだよ」

 これはインタビューのほんの一部にしかすぎませんが、2人のフレディーに対する愛情が感じられて、いいなと思います。
 2人がインタビュアーに、今一番大事だと思うものは何ですかと質問されて、「今現在、生きてることさ」と答えたのが印象的でした。

「ボヘミアン・ラプソディー」のレビュー全文は、こちらから。数曲のヒット曲も貼ってますので、よかったらお楽しみくださいませ。
 https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-11-27


2 しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

 「しあわせの絵の具」はカナダでもっとも愛されたフォークアート画家モード・ルイスの夫婦愛の物語を、サリー・ホーキンスとイーサン・ホークの共演で映画化した作品。モードの描く絵がとても温かく、素朴で素敵なのだ。


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 モード・ルイスご本人と二人の家


 カナダ東部のノバスコシア州に住むモード・ルイス(サリー・ホーキンス)は、子供のころから重度のリウマチで手足が不自由だった。彼女は、叔母に絵を描くことを禁じられ、独立しようと職を探した結果、家政婦募集のビラを目にし、住み込みで働く決心をする。しかし、雇い主は漁師の男、エベレット(イーサン・ホーク)で、孤児院育ちで、無骨、不愛想だった。が、モードは、ここで働くことを決心する。そして家事の合間に、家の中に絵を描き始める。

 エベレットはモードを、最初は家政婦としてしか、見ていなかったが、モードにの優しさに段々惹かれていき、二人はとうとう結婚する。


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  イーサン・ホークとサリー・ホーキンス

 ある日、エベレットが捕った魚をいつも買いに来る、サンドラ(カリ・マチェット)という女性が、二人の家を訪ねてくる。サンドラは美術関係の仕事をしている人だった。そこで彼女は、初めてモードが家中に描いた絵を観て、彼女の才能を見出し、絵の制作を依頼するのだった。

 そしてモードの絵は少しづつ売れ始めるが、二人は小さな家に住み続けた。二人は夫婦仲良くつつましく暮らしていくのだった。

 住んでいた家全体が、モードの作品で、扉、雨戸、壁、外壁、ティーポットなどに描かれた、素朴な絵がすばらしい。作品や二人の家は、現在はノバスコシア美術館に展示されているとのことだ。


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 ノバスコシア美術館に展示されているモードとエベレットの家


 モード・ルイスは不幸な生い立ちではあったが、心の美しさ、優しさを失わなかった人なのだと思う。そしてそれが主人のエベレットも幸福にしていったのだ。二人とも世間的には貧しい暮らしながら、夫婦として仲良く幸せに暮らした。愛情こそが、最も大事なものだということ教えられた気がする。

レビュー全文です。モード・ルイスの、他の絵も観られます。
https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-03-23


3 ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

 ゲイリー・オールドマンが、とうとうアカデミー賞主演男優賞をとった作品です!彼のチャーチル、そっくりだと思いました。ゲイリーを変身させた特殊メーキャップ・アーティスト辻一弘さん
はアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞!日本人として誇らしかったです。


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 この作品は戦時内閣の閣議記録を基に、チャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの27日間を描いたものです。

 1940年5月、第二次世界大戦初期。独裁者ヒトラー率いるナチス・ドイツの前にフランスは陥落寸前で、英国にも侵略の脅威が迫っていた。そんな中、新首相に就任した前海軍大臣のウィンストン・チャーチル。国民には人気があったものの、度重なる失策で党内はもちろん国王ジョージ6世(ベン・メンデルソーン)からも信頼を得られず、弱音を吐く彼を妻のクレメンティーン(クリスティン・スコット・トーマス)は優しく叱咤する。

 チャーチルは、勝利を目指して徹底抗戦を誓うが、戦況は悪化の一途を辿っていく。そしてドイツ軍に追い込まれた英国軍が、ついにフランス・ダンケルクの海岸で絶体絶命の状況を迎える。英国への上陸もいよいよ現実の脅威となる中、犠牲を回避すべくドイツとの和平交渉を主張する外相ハリファックス(スティヴン・ディレイン)の必死の説得を受けるチャーチルだった。

 ヒトラーとの和平交渉か、あるいは徹底抗戦か。思い悩むチャーチルに、ジョージ6世は街へ出て庶民の声を聴けとアドバイスする。そして、チャーチルはロンドンのアンダーグラウンド(地下鉄)に乗り込み、乗客に語り掛けるのだった。そして、国民の多くの声をつかんだチャーチルは、迷いを捨てて徹底抗戦を開始するのだった。

 チャーチルは読書家で、生涯に43冊を著した文筆家でもあり、回顧録ではノーベル文学賞まで受賞している。さらに大戦勃発前にヒトラーの自伝を読み、存在を危険視していたということだ。読書こそ、チャーチルの判断力の源だった。


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 ベン・メンデルソーン&クリスティン・スコット・トーマス&ゲイリー・オールドマン 


 これは映画としても、たいへん面白く創られていて、キャステイング、脚本とも申し分のないできである。キャストも適材適所でよかったと思う。すばらしい作品でなので、ご覧になったら、面白いと思いますよ。。

レビュー全文。
https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-04-29


4 シェイプ・オブ・ウォーター

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 ギレルモ・デル・トロ監督作品です。私はこの人のファンなので、楽しみにしていました。 
 
 政府の極秘研究所で掃除婦をしているイライザ(サリー・ホーキンス)は、ある日掃除をしているときに、水槽に居たアマゾンの奥地から運ばれた“クリーチャー”(半魚人)に出会う。

 言葉を話せないイライザは、一目で気に入ったクリーチャーに食料を運んだり、音楽をきかせたりしているうちに心が通じ合う。しかし、冷酷な軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)は容赦なく“彼”を虐待し、果ては、上官に生体解剖を提案する。イライザは無謀にも“彼”を救出すると心に決めるのだが……。

 デル・トロは小さいころ「大アマゾンの半魚人」(1954年)をみて、映画はもとより、奇怪でユーモラスなギルマン(半魚人)の形姿をとても気に入ったそうだ。それがこの映画に生かされたらしい。

 この映画の魅力は、いくつかの水中撮影シーンである。イライザは、浴槽のある部屋全体を、ドアの下の隙間にタオルをギューギュー詰めにして水で満たし、彼(クリーチャー)とに抱き合うシーンは幻想的でとても美しい。

 狂気に満ちた軍人ストリックランド(マイケル・シャノン)は、典型的な中産階級で、家には美人の奥さんとかわいい子供たちがいる。それなのに、自分の出世のためには人間や生き物を痛めつけても何とも思わない。まるでナチの将校のような人間だ。

 ストリックランドはイライザとジャイルズがクリーチャーを海に逃がしにいったことに感づいて後を追い、あげくの果てに海までやってくる。愛し合うイライザとクリーチャーの運命は……。


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 ギレルモ・デル・トロの描くファンタジーは、いつも残酷さがつきものだ。この「悪」の存在ゆえに、良きもの美しい心がとても際立って、観客の心を虜にするのではないかと思った。面白い映画だった。
 
 第90回アカデミー賞監督賞、作品賞その他2部門でも受賞。これに先立ち、ベネチア国際映画祭でも金獅子賞を受賞しています。

レビュー全文。
https://april2605.blog.so-net.ne.jp/2018-03-10


5 万引き家族

 邦画はほとんど観てませんでしたので、1本だけです。

 東京の下町、高層マンションの谷間に、取り残されたように建つ古い平屋。家主である初枝(樹木希林)の年金を目当てに、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、息子の祥太(城桧吏・じょうかいり)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)が暮らしていた。彼らは初枝の年金では足りない生活費を、臨時の仕事で稼いでいるが、それでも十分ではなく、時々万引きで物を補充するという家族で、社会の底辺にいるような一家だった。 

 だが、この家族には暗さがなく、いつも笑いが絶えない日々を送っている。そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子(ゆり)を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることになる。休日は家族全員で、楽し気に海に行ったりもするほど、仲が良かった。


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 だがある日、初枝おばあさんが突然亡くなり、お葬式も出せない彼らは、狭い庭におばあちゃんを埋めた。この事件をきっかけに、家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密が明らかになっていく。

 こんな境遇だったら、すごく暗いストーリーになりそうだが、そこが是枝監督のうまさなのだろうか、それとも樹木希林、リリー・フランキー、安藤サクラの演技力なのだろうか。少しも暗くなかった。特にこの3人のやり取りは、ユーモアがあり思わず吹き出してしまうほどだった。樹木希林、リリー・フランキー、安藤サクラの演技や掛け合いは、すばらしく自然で絶妙の間だった。祥太を演じた城桧吏(じょうかいり)も、少年の純真さがよく出ていたと思う。

 温かい家族だが、それぞれにいいかげんで、社会人としては失格ではある。しかし、このようにしか生きられない人々なのだと、最後はあきらめというか、妙に納得させられた不思議な作品だった。

 底辺の生活をしているという設定なので、家の中の様子などは、ビジュアル的にはちょっと見づらいところはあるかもしれないが、それがリアルさを産んでいるのだろう。

 情のある人々だが、生きていくためにはお金がいる。夫婦とも臨時の仕事で稼いではいるが、けがをしたり、人員整理でやめさせられたり、思うようにいかない。だから、万引きをしなきゃいけなくなる。それを悪いとは思ってないところがある。生きていくためには仕方がないのだろうか。

 一体これは、誰が悪いのか。男の子を捨てた親、女の子に虐待する普通の暮らしをしている母親、そんな人たちより、リリー・フランキーと安藤サクラが演ずる夫婦のほうが、よほど温かいでしょう。(責任感があるかどうかは別として)
 是枝さんは、そんな社会の矛盾をこの映画で表現して、問題提起したのだと思います。まことに面白い作品でした。


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 ちなみに、是枝裕和監督、この作品で、2018年度カンヌ映画祭「パルムドール賞 (最高賞)」受賞しています。上手い役者ぞろいで、映画としてもよくできています。機会があったらご覧になってください。






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